私の研究分野は量子情報理論、量子推定理論、原子光学、場の量子論、量子物性理論などと多岐にわたります. 主なバックグランドは理論物理学ですが、情報理論、数理統計学といった手法も用います. 上記の研究中でもここ数年取り組んでいるのが量子情報理論と量子推定理論です. 量子情報学の成果として、従来の古典通信、古典暗号、古典計算機などで不可能と思われていたことを実現する様々なプロトコルやアルゴリズムなどが提唱されています. 現在、量子情報学には数学、物理学、工学としての側面がありますが、次世代の量子情報処理技術を応用し実用化するためにはこれら3つの研究分野間での相互協力が必要不可欠です. そのために私は物理学の立場から量子情報理論において理論の根本をなす数学と応用である工学との間の架け橋をつくる研究を目指しています. 私が専門とする量子推定理論とは統計学でよく知られた統計的推測問題を量子系で研究するものです. 現在も発展している研究分野で、数学・理論物理・実験物理と様々な研究者が参入しています. また、上記の研究分野とは別に、情報理論的方法を用いて物理現象を異なった視点から考察するという研究も行っております.
(研究・指導テーマ一のこちらのページも参考にして下さい)紙とペンを使った解析方法を主に用いて研究しています. 必要に応じて計算機を用いた数値計算も行いますが、数値計算から何らかの数理構造を解析的に明らかにすることを最終目標にしています.
私の研究目的は自然現象を数学の言葉を用いてモデルを作りその解析から現象を様々なことばで理解する、そして新しい現象を発見することです. 多くのモデルを研究し、その積み重ねた結果から普遍的な構造を見出し、理論を作り上げることを研究の長期目標としています. また、数学的には厳密に正しくても物理的には間違っている研究結果は数多くあり、私は物理と数学のバランスを大切に考えて研究を行っています. 以下、研究内容のいくつかをもう少し述べたいと思います.
量子情報理論にたずさわる研究者人口は1990年代後半以降急速に増加しました. その背景として、それ以前に開拓、研究された量子通信理論、量子暗号、量子計算理論などが多くの物理学者、数学者、情報科学者たちの注目をあびて発展したことがあげられます. 2000年以降は研究の内容や重要性もだいぶ変化しており、今後も成長が著しい研究分野となることは間違いないでしょう. 現在注目されている問題の一つが量子計算機の実装方法とその実験研究です. 量子計算機は膨大な 量子素子を集積し作られることになります. 私は原子と光の物理系を用いた量子素子に関する理論研究を行っています. 量子計算機を実現するのに重要な要素として、量子状態をいかに長時間保ちながら精度よく制御できるかがあげられます. 私はこの問題に対して原子系や光学系を用いた解決策を共同研究者らと提案その実現可能性について理論研究を行っています.
量子状態推定問題では与えられた量子状態をより良く推定するためにはどのような測定をするのがよいか. また、そのような最適な測定を行い状態を推定した場合の推定誤差の理論限界はどうなっているだろうかといったことを調べてます. また、量子状態に対する推定問題だけではなく、(量子状態を量子状態へと 変換する) 量子通信路の推定や量子ノイズが存在する場合での量子状態推定問題等にも取り組んでいます. この研究は量子効果を用いた精密測定の技術への応用(量子メトロロジー、量子センシング、量子イメジング)もあり、現在世界中で注目されている研究の1つです.
(量子状態推定問題に関する一般向け解説、こちらも参考にしてください)大学院での学生生活は限られた時間のなかで必要なことを学び、それと同時に研究に取り組み研究結果を出すといったようになかなか大変なものです. ですが、その過程で得られる知識や経験、特に研究を通して身に付く論理的な思考力は卒業してから必ず役に立ち、何物にも代えられ難い大切なものとなることと思います. 皆さんの学生生活が有意義なものとなるように一緒に勉強、研究できることを楽しみにしております.